2026年3月19日
創造性インタビュー
リコーのラグビーチーム「ブラックラムズ東京(BR東京)」はチームビジョン「Be a Movement.(ムーブメントになろう)」に基づいて地域との共創に取り組み、ホストエリアの東京都及び世田谷区において「街全体で応援しよう」という機運を生み出した。また、ラグビー事業現場の意思決定や行動の指針としてこのビジョンが浸透し、創造性を発揮する文化を醸成。事業メンバーは専門性を発揮しながら、地域共創に向けて組織の創造性を引き出している。ブラックラムズ東京の西辻勤ゼネラルマネジャー(GM)=リコー未来デザインセンターラグビー事業室長=にその取り組みや成果を聞いた。一問一答は次の通り。

西辻勤ゼネラルマネジャー【BR東京提供写真を加工】
魅力をどう伝えるか
現在の主な業務は?
業務は大きく言って二つあり、一つはリコーのラグビー事業室の室長として、スポンサー獲得、チケット販売、グッズ企画など収益基盤の強化。もう一つは、GMとしてコーチングやメディカル体制の整備、データ分析などを通じて競技力向上を図っている。
2022年に新リーグ「ジャパンラグビー リーグワン」が始まり、プロ化・事業化への本格対応が求められるようになった。野球やサッカーなどは参考になるが、そのままラグビーに当てはまることはまれ。チケット販売やスポンサー活動ではまず、「ラグビーの魅力をどう伝えるか」から考える必要がある。さらに、地域の実情に寄り添いながら共感を得ていくためのアイデア出し、試行錯誤が欠かせない。
チャレンジを歓迎する文化
チーム運営で大切にしているのは何か。
常にポジティブでいることと、部下への承認を惜しまないことを意識している。小さくても良い行動を拾って言葉にする。新しいチャレンジを歓迎する文化づくりを意識し、ビジョンや目的に結びつく挑戦であれば投資が必要な場合でも背中を押します。
もう一つ大切にしているのが、ビジョンの浸透。「Be a Movement.」と掲げるだけでなく、朝礼やミーティングなど日々の会話の中で必ず触れ、メンバーの活動がビジョンとつながるよう促す。また、私一人が語るだけではなく、同じ感覚・熱量で語る「代弁者」を増やし、チーム全体に広げていくことを重視している。
地域への誇り、一体感を醸成
成果につながったと感じることは?
数年前に比べて、駅や街での掲出が大きく増えた。例えば三軒茶屋では複数の商店街が連携し、応援フラッグやポスターを掲出してくれた。かつては同じ地域にある商店街同士の横のつながりが少なかったが、チームの認知度向上に向けた地道な活動を重ねる中で商店街同士の信頼関係が生まれ、ブラックラムズ東京を起点に「街全体で応援しよう」という機運が広まった。
こうした活動は、地域への誇りや一体感を醸成する取り組み。まさに、われわれのビジョン「Be a Movement.」を実現できた一例だと思う。
従来の枠にとどまらない
ビジョンに基づく取り組みが実を結んだ要因は?
「Be a Movement.」を日々の判断軸として共有することにより、自分たちで工夫、創造性を発揮して次につなげる動きが強まった。地域社会では「体験づくり」と「関係づくり」、チーム運営に関連した事業面では「日常に浸透する(応援グッズ)商品」づくりで、従来のラグビーというスポーツの枠にとどまらない発想と行動が多くなった。
「Be a Movement.」で創意工夫
ブラックラムズ東京のチームビジョン「Be a Movement.」を実践する取り組みの成果として、三つの事例を紹介する。
〈1〉「また行きたい」と思われる「体験づくり」
ホストエリアで行われるラグビー体験イベントの魅力を伝え、参加者に継続的な関心につなげる-。武井真一さん(ラグビー事業室事業グループ)はさまざまな工夫を重ねている。大切にしているのは、初めての人にも安心して参加してもらえるような「双方向の体験づくり」だ。体験イベントでは、ボールの持ち方や投げ方といった基本からスタート。慣れたら的当てなどに挑戦し、成功体験を楽しく積み重ねる工夫をしている。
イベント会場にスパイクを展示するなど、ラグビーを身近に感じてもらう仕掛けも用意した。活動後は必ず情報発信を行い、2次元コードによる簡易アンケートで参加者の声を収集。次の改善につなげている。
〈2〉商店街連携の「輪」を広げる
ホストエリアにある商店街との連携は地域社会との関係づくりの要になる。ブラックラムズ東京の活動地域には七つの商店街があり、それぞれ運営方針が異なる。このため一体的に取り組むことが難しかった。加えて、当時はチームの認知度が十分とは言えず、認知の低さが連携を進める上での壁となっていた。
そこで赤堀龍秀さん(ラグビー事業室事業グループ)は、チームのビジョンを商店街関係者に丁寧に説明。対話を通じて共感を得ることから始め、徐々に「街全体で一緒に盛り上げていこう」という機運が生まれた。その結果、七つの全商店街に街路灯フラッグが取り付けられた。その後も継続的に交流しながら試合観戦の機会をつくり、応援の輪を地域全体に広げている。

世田谷区の商店街に掲げられたBR東京のフラッグ【BR東京提供】
〈3〉日常に浸透する商品づくり
ブラックラムズ応援グッズの企画を担う金城雄貴さん(ラグビー事業室事業グループ)は、日常でも身に着けたくなるデザインを考え、「試合以外でも無意識に選ばれるグッズ」を目指している。大切にしているのは、ラグビーの枠にとらわれない柔軟な発想だ。マスコット「ラムまる」の魅力を引き出すため、チーム内でブレーンストーミングを重ね、「何がはやっているのか」「ファンが喜ぶポイントはどこか」といった視点を共有している。
雑談の中から生まれるアイデアを積極的に拾い上げ、商品企画に反映。ラグビーという競技の既成概念を超え、日常とチームを自然につなぐ商品づくりを進めている。
西辻さんが掲げる「Be a Movement.」は、単なるスローガンではなく、日々の意思決定や行動を導く指針として機能し、スタッフや選手の自律的な挑戦を後押ししている。まさに「組織を流れる血流」のような役割を果たす。
創造性を生み出す推進力の一つは、メンバー一人ひとりに深く浸透した「ビジョン」である。仕事の意義が腹落ちすると、チームの姿勢が前向きになり、積極的な挑戦へとつながる。ビジョンは一度掲げるだけでなく、日々のコミュニケーションの中で確認、徹底していくことが重要だと改めて感じた。
