第19回「はたらく人の創造性コンソーシアム」が4月24日、オンラインで開催。今回は、リクルートワークス研究所グローバルセンター長の村田弘美氏を招き、リクルートの取り組みと海外フレキシブルワークの現況について聴いた。
村田氏は、リクルートにおける働き方改革の進展、創造性が発揮できる環境づくりについて、同社の理念と併せて紹介。また、フレキシブルワークを構成要素として、①労働時間②休日・休暇③働く場所④テクノロジー―を挙げた上で、さまざま制度やテクノロジーの活用など、欧米諸国で進行するフレキシブルワークに関して、現地訪問時のエピソードを交えて解説した。
〔講演要旨〕
◆働き方と創造性が発揮できる環境
●リクルートは「場」であり、個人の能力を発揮するための機会・環境を提供するという考え方。10年後の働き方を踏まえた人事コンセプトを設計し、柔軟でクリエイティビティが高く、個人の働き方を選択しやすい環境づくりをしている。
●「個人が最もパフォーマンスの高い働き方ができること」を優先していて、フルリモートであっても不都合は感じていない。育児中のメンバーが多いチームでは朝5時から業務を開始するメンバーがいるなど、環境に合った働き方を選択することができる。
●「新しい価値創造につながる制度としてリクルートグループ会社従業員を対象とした新規事業提案制度「Ring」が1982年からある。ゼクシィ、R25、スタディサプリなど数多くの事業がこの制度から生まれた。制度自体が進化していて、2022年には高校生Ringを開始。
●Ringで最終事業化まで残るのは0.6%と狭き門だが、例年1000件程度エントリーされる。過去の成功・失敗例の共有、企画書の書き方などのサポート体制があるものの、起案までの検討時間は業務外。リクルートの社是である「機会によって自らを変えよ」であったり、社内のあらゆるところに「『時間がない』なんて、言い訳だ。」といったポスターが貼られていたりして、時間や機会は自ら作り出すものであるという認識が徹底されている。
◆海外のフレキシブルワークとオフィス改革
●欧米主要国の労働時間は、日本よりも週1~2時間短い。これは、パンデミック前後で変わらない。就労時間の自由度に顕著な違いがあり、日本は固定時間制が60%近い。これに対して米独仏は就業時間の自由度が高い。世界各国で週休3~4日制、1日6時間労働のトライアルが進んでいる。多くの事例で肯定的な結果がでている。
●技術の活用によって、「オフィス」の位置づけが変わってきている。コミュニケーションツールやスケジューラー、ストレージなどの「ワークサイト」がバーチャルな職場としてオフィスを代替していて、マネジメントやルールもハイブリッド化に対応してきている。
●リモートワークの広がりを受け、欧州では「在宅勤務権」や「(職場と)つながらない権利」についての法律が、各国それぞれに合った形で検討、制定されてきている。
●パンデミック後の日本と欧米の出社日数を比較すると、英国は1.6日、米国は2.3日、日本は3.5日。英国と日本の職場ごとの仕事内容を比較すると、英国では自宅で契約書のサインや機密情報の取り扱いも可能。その一方で、日本はWeb会議以外の業務がオフィスで行われており、自宅はオフィスを代替できていない可能性が考えられる。リモートワークが進む各国の共通課題はコミュニケーション不足で、ツールの活用とリモートマネジメントの精度向上の取り組みが進められている。テクノロジーもいわば労働力として位置付けることも検討されている。
●以上のような状況から、フレキシブルワークの進行度を下図のようにまとめた。
フレキシブルワークの進行度(出所)村田氏作成
<参考>
リクルートの人材マネジメント:https://www.recruit.co.jp/people/career/
リクルートの新規事業提案制度 Ring:https://ring.recruit.co.jp/