第7回「はたらく人の創造性コンソーシアム」が6月16日、東京都中央区の日本橋髙島屋三井ビルディングで開催されました。現地参加・リモート併用で、今回は慶応大学の栗原聡教授と株式会社Ubieの風間正弘氏が講演。これまで私たちが議論をしてきた「はたらく人の創造性」に対してChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)がどのように貢献し得るのか。将来に向けて、仕事のあり方がどのように変化し、社会がどのように影響を受けるのか。両氏は、こうした視点を踏まえて生成AIの過去・現在・未来について説明。質疑応答では参加者から多数の発言があり、活発な議論が交わされました。
栗原教授は「人とAIとの共生社会の実現における生成AIのインパクト」と題して話されました。人とAIが共存していくのはどのような社会か、AIは人の創造性をどのように支援するのかについて、情報共有がありました。風間氏は、「GenerativeAI時代の働き方~生産性と創造性を高めることができるのか~」について解説。ChatGPTを使ったアイデア創造の事例が紹介され、AI技術の発展と働く人の創造性への影響見通しについて意見をうかがいました。
講演の概要は以下の通りです。
◆栗原聡教授(くりはら・さとし)
①AIの歴史
・1950年代から研究が進み、過去に2回の「AIブーム」が起った。現在は第3次AIブーム
・過去にも「AIが人に取って代わるのでは」という現在と同じような危惧がされた
・AIの科学技術は加速度的に進化している
・アニメに登場するような意思を持つ「自律型AI」はまだ存在しない
・AIはIT技術であり「道具」、使い方が重要
・生成AI登場によって一般人も簡単にAI活用が可能になり「AIの民主化」が起こった
②AIを創造に活用
・創造性とは「点の発見(クリエーション)」と「点と点を結ぶ繋がりの発見(イノベーション)」
・AI自体は「創造」する機能を持っていない、あくまで人の創造をサポート
・一方で、AIから情報をただ受け取るだけでは思考力低下を招く
・AIを使える層と使われる層の格差が進む
・AIと人では長所・短所が異なる
・あらためて「人間力」が必要に
(出所)慶応義塾大学 栗原聡教授
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◆風間正弘氏(かざま・まさひろ)
①生成AIの活用事例
・社内用ChatGPTツールによって「求人票の下書き」や「会社イベントのQ&A」を作成
・GitHub Copilot(※1)を活用してコーディング業務が平均38%効率的になるという結果に
・Midjourney(※2)を活用して会社バリューのステッカーを作成
・生成AI活用のアイデア創出ワークショップを開催
※1GitHub株式会社が提供しているコード補完ツール。コードを生成したり、コードの記述を支援することができる。
※2テキストの説明文から画像を作成する独自の人工知能プログラム。
②生成AI時代の働き方
・ChatGPTやGithub Copilotは生産性向上の観点から「なくてはならない」ものに
・生成AIはプロンプトに基づいて大量の回答を生成することが可能。しかし、単純なプロンプトだけでは、人間が持つような創造性や洞察力は持ち合わせていない。そのため、さまざまな情報を統合して、新しい洞察やアイデアを生成することができるSynthAI(※3)という概念が重要である。これにより、情報を複合的に組み合わせることで、人間が持つような創造性や洞察力を生成AIに付加することが可能となり、生産性向上や創造性向上が期待できる。
※3 synthesis AI(合成AI)という、様々な情報を組み合わせて、そこから洞察を得る仕組み。
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講師プロフィール
栗原聡氏(くりはら・さとし) 慶應義塾大学理工学部教授、慶應義塾大学共生知能創発社会研究センター センター長。マルチエージェント、複雑ネットワーク科学、計算社会科学などの研究に従事。著書「AI兵器と未来社会キラーロボットの正体」(朝日新書)、編集「人工知能学事典」(共立出版、2017)など多数。NEDO「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」プロジェクト「インタラクティブなストーリー型コンテンツ創作支援基盤の開発」代表。
風間正弘氏(かざま・まさひろ) 東京大学大学院で推薦システム(※)について研究し、卒業後は株式会社リクルートとIndeedで推薦システムの開発やプロジェクトマネジメントを経験。そこで開発したアルゴリズムを推薦の国際学会RecSysにて発表。現在は、Ubie株式会社にてデータサイエンス組織の立ち上げ、及び医療分野の機械学習プロダクトの開発に携わる。共著「推薦システム実践入門 仕事で使える導入ガイド」(オライリージャパン)がある。
※特定のユーザーに対して、アイテムへの嗜好を予測し、提示すべきアイテムを決定するシステム。