第18回「はたらく人の創造性コンソーシアム」が4月19日、秋葉原UDXとリモートのハイブリッド方式で開催された。今回は、イトーキのDX推進本部 デジタルSL企画統括部秋山恵さん、リコーの先端技術研究所HDT研究所 所長原田亨さんがそれぞれ、「創造性」に関する取り組みや課題を紹介。会合後には、現地参加メンバーが、NTTアーバンソリューションズのオフィス『未来のオフィス 4×SCENE(フォーシーン)』を見学した。
会合でイトーキの秋山さんはイトーキが手掛ける「学ぶ空間の創造性:Smart Campus Solution」の取り組み事例を講演。大学との共同実験を通じて得られた教育空間づくりのアプローチや課題について語った。また原田さんは、創造性の発揮を支援する方法を探索し、具現化していくことをミッションとした実践型研究所「3L(サンエル)」と研究所内の新しいコンセプトの会議空間「RICOH PRISM」でのデータ活用の現状と課題を説明した。
〔講演要旨〕
◆イトーキ 秋山 恵さん
●これまでの大学では、社会に出る前に知識やスキルを身に付けることが重視されていたが、今は、社会課題を産官学連携で解決する実践力・創造性が求められている。
●そのため、講義型の授業からグループワークを取り入れた学習が増えている。すると、今までのように授業の最後にテストをする以外の評価方法が求められる。
●そこで、学生の振る舞い、発言、活動を可視化するために、画像や音声、位置データを活動データとして記録し評価に活用するというアプローチを模索した。
●また、リアルとバーチャルが融合した学びの空間づくりについても、思考の発散、収束やコミュニケーションなどの活動のシーンに合わせた空間をデザインしている。
<講演資料>
資料はこちらからご覧になれます。
<参考>
令和4年度「次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進事業」
静岡聖光学園×イトーキ 成果報告 メタバース技術を活用した探求/協働学習・リモート国際交流の実践
https://www.mext.go.jp/content/20230315-mxt_shoto01-100013299_003.pdf
◆リコー 原田 亨さん
●RICOH PRISMのコンセプトは「デジタルアルコール」。インスピレーションを得るために遠くに行かなくても、身近な会議室を空間演出によって非日常の精神状態をつくれないか、という考えの基に新たな会議空間を作った。
●創造性が高まるのは自己開示ができている時だという仮説に基づいて、会議室内での振る舞いや位置情報、音声、心拍などとアンケートデータを取得。
●実験の一つとして、専門性の異なるメンバーが対話によって創造性を発揮する過程を言葉のデータから解き明かすことを行った。
●今後は、創造性に関する知見をより高める実験に取り組んでいく予定。
<講演資料>
資料はこちらからご覧になれます。
<参考>
RICOH 3L(サンエル)https://www.3l.ricoh/about-3l/
RICOH PRISM https://www.prism.ricoh/
■『未来のオフィス 4×SCENE(フォーシーン)』
15時からは、会合が開かれた秋葉原UDX6階にある『未来のオフィス 4×SCENE(フォーシーン)』を見学。フォーシーンは、Afterコロナの時代を見据えて「働く」の未来を描き、体現し続ける実験的ライブオフィスだ。「人」を起点にデジタルがナチュラルにより良い働き方をサポートするというコンセプトでデザインされた「四つのSCENE」に分かれている(詳しくは上記リンクを参照)。
◆INTRODUCTION
「SCENE」は役割が異なる仕事場所で、四つのうち最初に訪れた「INTRODUCTION」では、心地よい爽やかな香りが見学者を出迎えてくれた。エントランス脇のモニターを見れば同僚の出社状況や場の混雑状況がすぐに分かる。さらに、デスクの予約情報や出社情報から、1人ひとりに合わせて効率が上がる出社タイミングや最適な仕事場所をレコメンドしてもらえる機能もある。
例えば、同僚が翌日に出社予定であれば「明日、オフィスに行ってみませんか」といったレコメンドが送られてくる。また、出社時にウエアラブル端末を身に付けると、行動履歴やストレス度合いから、コーヒーや瞑想(めいそう)などリフレッシュするタイミングを教えてくれる。
社員の適切な出社時期などをレコメンド【NTTアーバンソリューションズ提供】
◆CASUAL
次に訪れたのは「CASUAL」。ここはカフェなどが併設され、多様な人が集まり、カジュアルな交流を促す空間だ。席は予約不要で気軽に利用できる。社員のパフォーマンスを高めるため、サーカディアンリズム(体内時計)に合わせた光と音の演出がされている。
CASUALスペース【4月19日、東京都千代田区】
部屋の照明について担当者は「明るさは時間によって調整されます。例えば昼は明るめ、夜は落ち着いた色目です。社員が仕事に没頭して忘れがちな時間感覚を持つため、Well-Beingにも寄与しています」と説明。BGMの音量について、参加者から「私たちの声が大きくなると、流れる音楽の音量が上がった!」という驚きの声が上がった。利用している社員は、「周囲を気にすることなくカジュアルな会話がしやすいオフィスだ」といい、好評のようだ。
CASUALスペース。照明の色と照度の変化
【NTTアーバンソリューションズ提供】
◆TEAM
次は組織・チームで集まって働きやすいエリア「TEAM」。役員ブース、執務デスク、収納があり、組織活動の中心ゾーンとなっている。個人用ロッカーがあり、出社した社員がこのエリアに顔を出す。このゾーンは情報保護の観点から、見学者による撮影は不可となっている。
TEAMスペース【NTTアーバンソリューションズHPより抜粋】
◆FOCUS
図書館のように静かに集中して働けるエリアが「FOCUS」。植栽のあるデスク、天板の高さを自由に調整できる昇降デスク、ブース席、囲われ感のあるソファ席など多様な集中するための席がある。各席に気流制御装置があり、快適な環境を提供。集中を妨げるような会話やウェブ会議・長時間の電話は不可となっている。
見学中、特に人気だったのは、囲われ感のある個別ソファだ。参加者からは「周囲の音が遮断され、集中できる」「ソファとデスクが体になじみ、座っていても負担が掛からない」、「目の前の景色もよく気分転換もできる」との声が出ていた。NTTアーバンソリューションズ執行役員 デジタルイノベーション推進部長の上野晋一郎さんは「個人的に大好きなゾーン。とても仕事がしやすい」と日常的に利用し、手ごたえを感じているようだ。
説明をする同上野氏(右)と個別ソファを体感する参加者
【4月19日、東京都千代田区】
◆番外編「瞑想室」
四つのSCENE以外で特に目を引いたのが、瞑想室だ。Well-Being実現のための実験的な取り組みで、集中力を高め、気づきを得るためのものだという。NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部 企画担当の主査・渡邉裕美さんは「意図的に瞑想する時間を設けることは、リフレッシュするだけでなく、創造性の発揮にも貢献するはずです」と指摘。参加者も「少しの時間だけでも気分が変わる」「アナウンスのレクチャーがあるため、初めてでも使いやすい」といい、好評だった。機会があれば、ぜひ一度試したいゾーンだ。
瞑想を体験する一橋大学永山氏
【2024年4月19日東京都千代田区】
この他にも約60分の見学の中でさまざまな施設を回った。2度目の訪問だった一部の参加者は「施設がアップデートされている」と指摘。現在も改善を重ねているようだ。今後も「人」の働き方を起点に空間とデジタルを同時にデザインし、アフターコロナの最先端オフィスを提案する考えだ。機会があれば、皆さんも一度訪れてはいかがだろうか。
お問い合わせ・ご見学お申込み先
4scene-ml@ntt-us.com